音楽は、言葉を超えた感情を伝える力を持ちます。
音楽葬は、この感動的な力を利用して、故人を特別な方法で送り出す葬儀の形式です。
今回の記事では、音楽葬の基本から流れ、曲の選び方、そして費用に至るまで、初心者にもわかりやすく解説します。
音楽葬とは?
音楽葬は、故人の人生や精神を、故人とゆかりの深い音楽を通じて讃える、現代的な葬儀の形式です。
従来の葬式のように宗教的な読経や儀式に重きを置くのではなく、故人の好きだった音楽、生前に演奏した音楽、または故人を象徴する曲を、CDから生演奏までさまざまな形で取り入れます。
音楽は、参列者にとって故人との記憶を鮮明にし、感動的な瞬間を提供する役割を果たします。
音楽葬と一般葬の違い
従来の一般葬儀では、宗派や宗教によって定められた流れに従って進行するのが一般的です。
僧侶の読経や特定の宗教的儀式が中心となり、葬儀の流れは比較的固定されています。
この形式では、音楽を取り入れることは可能ですが、その範囲や役割は限られていることが多いです。
一方、音楽葬では、音楽が葬儀の中心となり、宗教的な要素は背景に留まります。
音楽葬は自由度が高く、故人の個性や遺族の希望に応じて、葬儀の流れや内容を自由に決めることができます。
この柔軟性は、故人の人生や性格を反映させ、より個人的かつオリジナルなお別れを実現することを可能にします。
音楽の役割
音楽葬では、故人との思い出や感情を音楽を通じて表現します。
選曲は故人の好きだった曲や、生前に演奏した曲、故人の人生を象徴する曲など、遺族と故人の関係や故人の人生観を反映したものになります。
これに対して、一般葬儀では、音楽は式の一部分として取り入れられることがありますが、その役割は限定的です。
音楽葬の中心にあるのは、故人との記憶を鮮明にし、参列者の心に深く残る感動的な瞬間を提供することです。
故人との関係や思い出を音楽を通して表現し、遺族や参列者に故人を思い出させることができるのが、音楽葬の大きな魅力です。
音楽葬の増えてきた背景
音楽葬が増えてきた背景には、個人主義の高まりと宗教からの距離感があります。
多様化する現代社会において、故人一人ひとりの個性や人生を尊重する風潮が強まり、それに伴い、故人の人生を反映させたり、遺族の希望を反映させたりする葬儀形式が求められるようになりました。
音楽葬は、このようなニーズに応える形で広がっているのです。
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音楽葬が選ばれる理由/メリット・デメリット
音楽葬が選ばれる理由には、そのユニークな特性と、参列者に与える深い印象が挙げられます。
しかし、新しい形式の葬儀であるため、一部のデメリットも認識しておく必要があります。
音楽葬のメリット
思い出に残る式:
音楽葬では、故人との関わりを象徴する音楽を流すことで、参列者の心に強い印象を残します。曲が流れる度に故人を思い出す機会を提供し、日常の中で再び故人とのつながりを感じることができます。
個性を表現できる: 音楽葬は、故人の好みや趣味を反映させることが可能です。
これにより、故人の人生や性格をより深く理解し、表現することができます。
家族との絆を深める:
準備段階での「故人の好きだった音楽は何か」を家族と話し合うことで、故人を共に偲び、家族間の絆を深める機会となります。
御布施など費用の削減が出来る:
基本的に自由葬である音楽葬に宗教や宗派はないため、僧侶を招いて読経などの必要がありません。
葬儀の際の読経や戒名へのお礼として僧侶に渡すお布施が不要になります。
そのため、一般的な葬儀に必要な御布施などの費用がかからないことも、音楽葬のメリットと言えるでしょう。
音楽葬のデメリット
周囲の理解を得にくい:
新しい形式であるため、特に伝統的な葬儀に慣れている年配の方々からの理解を得にくいことがあります。
事前の説明や、故人の希望を明確に伝えることが重要です。
式場の対応:
全ての式場が音楽葬に対応しているわけではなく、場所によっては追加費用が発生する場合があります。
宗教的な要素の欠如:
音楽葬は宗教的な要素が少ないため、宗教的な儀式を重視する遺族には不向きな場合があります。
音楽葬は、故人を偲ぶ新しい形式の葬儀であり、その自由度とオリジナリティが魅力です。
しかし、実施する際は、これらのメリットとデメリットを十分に理解し、遺族や参列者に適切に伝えることが大切です。
音楽葬の流れ
音楽葬は、故人の趣味や性格に合わせた音楽を取り入れ、一般的な葬儀にはない個性的な流れで進行します。
音楽葬は、宗教や宗派にとらわれず、自由な形式で行われるため、固定された式次第は存在しません。
しかし、一般的な葬儀と同様に、お通夜と告別式で2日間行うことも一般的です。
音楽葬の流れの一例を紹介します。
無宗教の場合の音楽葬の流れ
開式前:
故人の好きだったBGMを式場ロビーや会場で流します。
開式の辞:
司会者による開式の挨拶が行われます。
黙とう:
故人を静かに偲ぶ時間を設けます。
故人の紹介:
故人の生涯や功績について紹介します。
弔電の読み上げ:
遺族や参列者による弔電の読み上げが行われます。
献奏・献花:
故人に関連した音楽の生演奏や、参列者による献花が行われます。
喪主による挨拶:
故人との思い出や感謝の言葉が述べられます。
閉式:
式の終了を告げる言葉が述べられます。
出棺:
故人を最後の旅立ちの場所へと送り出します。
仏式の場合の音楽葬の流れ
仏式の音楽葬では、一般的な仏式葬儀に加えて音楽が取り入れられます。
開式前:
故人の好きだったBGMを流します。
開式:
司会者による開式の挨拶が行われます。
読経:
僧侶による読経が行われます。
遺族・親族焼香:
遺族や親族による焼香が行われます。
参列者焼香:
参列者全員による焼香が行われます。
弔辞・献奏:
弔辞の読み上げと故人を偲ぶ音楽の演奏が行われます。
閉式:
式の終了を告げる言葉が述べられます。
出棺:
故人を最後の旅立ちの場所へと送り出します。
これらの流れは一例に過ぎませんが、音楽葬では仏式などの要素を組み合わせ、故人の人生や性格、遺族の希望に合わせたオリジナルの葬儀を形成することが可能です。
音楽葬は、故人の記憶を音楽とともに感動的に偲ぶ、特別なお別れの場となります。
音楽葬で流す曲目の選び方
音楽葬では、故人の人生や性格、趣味を反映した音楽を選ぶことが一般的です。
どの曲を選ぶかは、故人との思い出や遺族の感情に大きく影響されます。
故人とのゆかりのある曲
最も一般的なのは、故人が生前に好んでいた曲や、その人生を象徴する曲を選ぶことです。
例えば、「G線上のアリア」「亡き王女のためのパヴァーヌ」のようなクラシック音楽から、「川の流れのように」「精霊流し」のような日本の叙情曲まで様々なジャンルが含まれます。
また、故人が特定の曲を葬儀で流してほしいと指定していた場合は、その希望に沿って選曲するのが適切です。
よく使用される音楽の傾向
一般的に音楽葬では、故人の時代や趣味を反映した10曲程度の音楽を流します。
「アヴェ・マリア」や「カノン」のようなクラシックの曲から、「アメイジング・グレイス」や「星に願いを」のようなポピュラー音楽、さらには「ふるさと」や「神田川」のような日本の歌まで幅広い選択肢があります。
音楽葬での曲選びは、故人を偲ぶ最も重要な部分の一つです。
故人の好みや遺族の願いに応じて、心に残る音楽を選ぶことで、故人の人生を讃えるとともに、遺族と参列者に心温まる記憶を残すことができます。
音楽葬での著作権について
音楽葬を行う際に重要なのが、流す音楽の著作権に関する理解と対策です。
音楽葬で使われる曲は、著作権の観点からも注意が必要です。
葬儀での著作権
日本では、ほとんどの葬儀場は日本音楽著作権協会(JASRAC)と契約を結んでおり、式場での音楽使用に関しては、喪主や遺族が使用料を負担する必要はありません。
葬儀場がこの契約を結んでいれば、JASRACが管理する楽曲を使用しても、喪主や遺族が著作権の問題を指摘されることは通常ありません。
ただし、全ての葬儀場がこの契約を結んでいるわけではなく、契約していない場合は別途対応が必要になる場合があります。
著作権の許可が必要な場合
葬儀場や店舗などで著作権のあるCDやインターネット配信の音源を流す場合、または生演奏を行う場合には著作権の許可が必要です。
これには、私的な利用であっても、著作権の許可が必要なケースが含まれます。
著作権の許可が不要な場合
著作者の死後50年を経過した曲は、著作権の許可なしに自由に使用できます。
自宅葬儀など非営利目的の場合は、著作権のある音楽を使用しても問題ありません。
トラブルを避けるために:
葬儀社や施設がJASRACと契約を結んでいるかを確認し、必要に応じてJASRACへの相談を行うことが大切です。
音楽葬で特定の曲を使用したい場合は、事前に著作権の許可が必要かどうかを確認し、適切な手続きを行うことが重要です。
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音楽葬の費用相場について
音楽葬の費用は、葬儀の規模や音楽の演出内容によって大きく異なります。
音楽葬の費用を計画する際には、以下のポイントを考慮すると良いでしょう。
費用の平均相場と費用がかかる項目のポイント
費用の平均相場:
日本全国での自由葬の平均費用は約147万円と言われていますが、音楽葬の場合、演奏形式によっては費用が大きく変動することがあります。
例えば、プロの演奏家に依頼すると、一人あたり1日5万円前後が相場となることが多いです。
生演奏の影響:
生演奏を取り入れる場合、演奏者によっては追加の費用が必要です。
ピアノ演奏のみであれば1名の依頼で済みますが、より多くの演奏家を呼ぶ場合、例えば四重奏や吹奏楽団など、費用は大きく増加します。
CD/DVD利用での節約:
費用を抑えたい場合は、CDやDVDなどを利用して音楽を流す方法があります。
また、知人や音楽サークルのメンバーに演奏を依頼することで、プロの演奏家に比べて費用を節約することができます。
全体の費用相場:
一般的な仏式葬儀と同様に、音楽葬の全体の費用は、飲食接待費を含めて約200万円程度と考えることができます。
しかし、「音楽葬だからといって特別安い」というわけではありません。音楽葬の強みは、遺族の希望に合わせて葬儀をカスタマイズできる点です。
予算に応じた計画:
音楽葬の費用は、希望する音楽演出によって決まります。
葬儀担当者に予算を伝え、葬儀内容の相談をすることで、予算に合った葬儀を実現することが可能です。
葬儀社との事前の打ち合わせで、予算内で最適な音楽葬を計画しましょう。
音楽葬の注意点とまとめ
音楽葬は、そのオリジナル性と自由度の高さから多くの人々に選ばれていますが、計画と実施の過程で考慮すべきいくつかの重要な点があります。
式場の選択と宗教の確認
式場の制限:
音楽葬を受け入れていない式場もあります。
事前に葬儀場や施設が音楽葬に対応しているかどうかを確認することが必要です。
宗教的制約:
所属している宗教や宗派によっては、音楽葬が許可されていない場合もあるため、事前に確認しておくことが重要です。
選曲の重要性
曲選び:
故人の趣味やイメージに合った曲を選ぶことが重要です。
故人が特に好んだ曲や、その人生を象徴するような曲を選ぶことで、より意味深い葬儀になります。
曲の多様性:
同じ曲を何度も繰り返すことは避け、多様性を持たせることで、葬儀全体を通じて故人の多面性を反映させることができます。
著作権への配慮
著作権の確認:
使用する音楽がJASRACなどの著作権管理団体に管理されているかを確認し、必要ならば適切な手続きを行うことが必要です。
特に、葬儀場や施設で音楽を使用する場合は、著作権問題が生じる可能性があるため、事前に確認が必要です。
自宅葬の場合:
自宅で音楽葬を行う場合は、営利目的でなければ著作権侵害の問題は発生しません。
費用管理
予算の設定:
音楽葬の費用は、行われる内容によって大きく変動します。
予算を事前に設定し、葬儀社との相談を通じて、費用をコントロールすることが重要です。
生演奏の費用:
生演奏を取り入れる場合、演奏家に支払う依頼料金が追加費用として発生します。
これは、音楽葬の費用を大きく左右する要因の一つですので注意しましょう。
音楽葬は、故人を偲ぶ新しい形式の葬儀ですが、その実施に配慮が必要です。
式場の選択、宗教的制約、選曲、費用管理、著作権への配慮など、事前にしっかりと計画を立てることが、スムーズな音楽葬の実施につながります。
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アルファクラブ武蔵野株式会社
葬祭部 さがみ典礼 執行役員
大学卒業後、アルファクラブ武蔵野(株)葬祭部さがみ典礼に就職してから約20年を葬儀場の現場でお客様の悲しみに寄り添ってきました。
現在は、さがみ典礼の責任者として、現場スタッフとともに残されたご家族のみなさまがより安心して葬儀を進めていただけるお手伝いできることを心掛けています。
2004年3月 東邦大学理学部卒業
2004年4月 アルファクラブ武蔵野(株)葬祭部 入社
2020年1月 アルファクラブ武蔵野(株)葬祭部 川口支社 支社長
2021年5月 アルファクラブ武蔵野(株)葬祭部 副本部長
2022年5月 アルファクラブ武蔵野(株)葬祭部 本部長
2023年9月 (有)中央福祉葬祭 取締役(アルファクラブ武蔵野(株)葬祭部 本部長兼務)
2024年5月 アルファクラブ武蔵野(株)葬祭部 執行役員