近年、改葬という言葉を耳にすることが増えています。
改葬には様々な理由や手続きが伴い、理解すべきポイントがたくさんあります。
本記事では、その背景や詳細な手順、関連する費用について詳しく解説します。
改葬とは何か?
改葬とは、故人の遺骨を現在のお墓から別の場所に移すことを指します。
分かりやすく言うと、お墓の「引っ越し」や「移転」にあたります。
改葬には、遺骨だけを移動する場合もあれば、お墓そのものや墓石を一緒に新しい場所へ移す場合もあります。
改葬が行われる理由はさまざまで、家族の事情や環境の変化、また故人の遺志を尊重するために決定されることが多くあります。
改葬と混同されやすい言葉に「墓じまい」がありますが、両者には違いがあります。
墓じまいは現在のお墓を解体し、墓地の使用権を返却することで、遺骨を手元供養や散骨、永代供養墓に移すなどの方法が含まれます。
改葬は、墓じまいを行った後に、新しいお墓に遺骨を納めるまでの一連の流れを指すため、墓じまいだけでは改葬とは呼びません。
改葬の方法にはいくつかのパターンがあります。
例えば、
- 元のお墓を撤去して遺骨だけを新しいお墓や納骨堂に移したり、場合によっては元のお墓ごと新しい場所へ移設。
- 遺骨の一部を分骨して、新しい場所に納める。
改葬の際には、費用や手続きが必要となるため、事前に十分な準備と確認を行うことが大切です。
改葬が増えている背景と改葬が必要になる理由
改葬とは、故人の遺骨を別の墓地に移すことを指し、近年増加傾向にあります。
2019年には、改葬件数が12万件を超えました。(※1)
時代とともに家族のあり方やお墓に対する意識が変わり、さまざまな事情から改葬を選ぶ人が増えています。
ここでは、改葬が増加している背景と、その必要性について詳しく解説します。
※1 引用元:令和3年度衛生行政報告例の概況
改葬が増えている背景
改葬が増えている大きな要因の一つは、家族構成の変化です。
かつては長男が家を継ぎ、代々同じ土地で先祖のお墓を守るという形が一般的でした。
しかし、都市部への転居や仕事の都合で家族が散らばるケースが増え、お墓参りに行くことが難しくなっています。
そのため、遠方にあるお墓を自宅近くに移して、より手軽にお参りができるようにするために改葬を選ぶ方が増えています。
また、少子高齢化の進行も影響しています。
お墓の継承者がいない、あるいは高齢の親族が墓参りや管理を続けるのが難しいといった問題から、将来の管理負担を減らすために改葬や墓じまいを選択することが増えています。
改葬が必要になる理由
改葬が必要になる理由は多岐にわたります。以下に代表的なものを紹介します。
お墓の管理の利便性
自宅とお墓の所在地が離れていると、定期的なお墓参りや管理が難しくなります。
特に高齢者にとっては遠方への移動が負担になることも多く、自宅近くにお墓を移すことで、より気軽にお参りできる環境を整えることができます。
後継者不足
少子化や核家族化の影響で、お墓を管理する後継者がいない場合、無縁墓となるリスクがあります。
このような事態を避けるため、永代供養墓に改葬して、寺院や霊園に管理を任せるケースが増えています。
永代供養墓であれば、管理や供養が継続的に行われるため安心です。
家族の事情や経済的理由
家族の事情で遠方に引っ越した場合や、墓地の維持費が経済的に負担になる場合も、改葬の理由となります。
たとえば、墓地の維持費が高額になった場合、管理負担が軽減される納骨堂や永代供養墓に改葬することで、費用面の負担を減らすことができます。
その他の理由
故人の遺志により、生前に特定の場所へ埋葬を希望していた場合や、宗教的な理由で別の墓地へ移す必要がある場合も、改葬が検討されます。
また、墓地の周辺環境が悪化してしまったり、墓地自体が老朽化したりした場合にも、移転を考えるケースがあります。
改葬は、故人への敬意を保ちながら、家族の負担を軽減するための選択です。家族の事情や未来を見据え、慎重に判断することが大切です。
改葬と墓じまいの違い
改葬と墓じまいは、どちらもお墓に関する手続きですが、その意味や目的は異なります。
それぞれの違いをわかりやすく解説します。
改葬とは、お墓の移動
改葬とは、故人の遺骨を現在のお墓から別の場所に移すことを指します。
たとえば、遠方にあるお墓を、自宅近くの墓地に移す場合などがこれにあたります。
改葬では、遺骨だけでなく、墓石や骨壺なども一緒に新しい場所へ移動させることが多いです。
改葬が行われる理由としては、家族の生活環境の変化や、お墓参りのしやすさを考慮して選ばれることが多く、故人の遺志を継ぐために行われることもあります。
墓じまいとは、お墓の撤去
一方で、墓じまいとは、お墓を完全に撤去して更地にすることを指します。
墓じまいを行う際には、遺骨を別の場所に移動させることが一般的ですが、それ以外にも、散骨や永代供養墓に納めるなど、さまざまな方法があります。
墓じまいは、継承者がいない場合や、お墓の管理が困難になった場合、また経済的な理由から行われることが多いです。
墓じまいをすることで、お墓の使用権を管理者に返還し、将来の管理負担を軽減できます。
改葬と墓じまいの関係
改葬を行う際には、現在の墓地を撤去する墓じまいの手続きが必要になるため、改葬の一部に墓じまいが含まれると考えるとわかりやすいでしょう。
しかし、墓じまいをしても新しいお墓を設けず、永代供養墓や散骨など別の供養方法を選ぶ場合は、改葬とは異なります。
改葬は「お墓を別の場所に移すこと」、墓じまいは「お墓を撤去し、使用権を返還すること」です。
それぞれの手続きには異なる準備が必要になるため、家族や親族と相談しながら、故人への最適な供養方法を選ぶことが大切です。
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改葬の流れ(手順)
改葬を進めるには、いくつかのステップがあります。
事前に手順を把握しておくとスムーズに進めることができ、家族や関係者とのトラブルを防ぐことができます。
ここでは、初心者にもわかりやすい改葬の流れを解説します。
①親族や寺院との相談
改葬は家族全体に関わる重要な決断です。
まず、親族や現在の墓地の管理者(寺院や霊園)に相談し、改葬の必要性や理由、新しい納骨先について合意を得ましょう。
場合によっては、先祖代々の墓を動かすことに対して親族が感情的な反応を示すこともあるため、慎重に話を進めることが大切です。
また、寺院墓の場合は、檀家契約が絡むため、改葬が檀家の脱退に繋がる可能性もあります。
②新しい納骨先の決定と受入証明書の発行
次に、改葬先となる新しい墓地や納骨堂を決めます。
新しい墓地の管理者に「受入証明書」を発行してもらいましょう。
この証明書は、改葬許可を得るために必要な書類の一つです。
受け入れ条件や費用についても事前に確認し、見学に行くなどして、納得のいく場所を選ぶと安心です。
※必要書類に関しては、次章をご参照ください。
③改葬許可申請書の取得と申請
現在のお墓がある自治体の役所で「改葬許可申請書」を入手します。
この書類には、必要な情報を記入し、後述の埋葬証明書や受入証明書を添付して提出します。
自治体によっては手数料がかかる場合もあるため、確認しておくと良いでしょう。
※必要書類に関しては、次章をご参照ください。
④埋葬証明書の発行
現在のお墓の管理者に、埋葬証明書を発行してもらいます。
この証明書は、現在の墓地に遺骨が埋葬されていることを証明する書類です。
感謝の気持ちを伝えながら正式に改葬の意思を伝え、協力を得るようにしましょう。
※必要書類に関しては、次章をご参照ください。
⑤改葬許可証の発行
改葬許可申請書、受入証明書、埋葬証明書の3つの書類を揃えたら、役所に提出します。
自治体が審査を終えると、「改葬許可証」が発行されます。
この許可証があれば、正式に遺骨を移動させることが可能になります。
※必要書類に関しては、次章をご参照ください。
⑥遺骨の取り出しと魂抜き
改葬許可証の発行後、現在の墓地で遺骨を取り出します。
取り出す前に、僧侶や神職を招いて「魂抜き」(閉眼供養)という儀式を行い、お墓に宿る魂を抜いてもらいます。
魂抜きが終わった後、墓石を撤去し、遺骨を丁寧に取り出します。
⑦新しい納骨先での納骨と開眼供養
新しい納骨先に遺骨を運び、納骨します。
納骨の際には「開眼供養」と呼ばれる儀式を行い、新しいお墓に魂を宿らせます。この儀式をもって改葬は完了です。
改葬は複数の手続きが必要で時間がかかる場合もあります。
あらかじめ手順を確認し、必要な書類を準備して進めることで、スムーズに改葬を完了させることができます。必要書類に関しては、次章をご参照ください。
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改葬に伴う手続きと必要書類
改葬を行うには、いくつかの手続きが必要になります。
改葬は遺骨の移動を伴うため、自治体や墓地の管理者とのやりとりが欠かせません。
以下で、一般的な改葬手続きの流れと必要な書類について詳しく解説します。
①新しい納骨先の決定
改葬を行う際には、まず新しい納骨先を決定します。
新しい墓所や納骨堂を選び、契約を完了しておきましょう。
新しい納骨先が決まっていないと、改葬手続きを進めることができません。
②改葬許可申請書の準備
改葬をするには、現在のお墓がある自治体に「改葬許可申請書」を提出し、改葬の許可を得る必要があります。
この申請には、遺骨が埋葬されていることを証明する「埋葬証明書」と、新しい墓所が遺骨を受け入れることを証明する「受入証明書」が必要です。
各証明書は現在のお墓を管理している寺院や霊園、新しい納骨先から発行してもらいましょう。
【関連リンク】
・さいたま市/改葬の手続き
・埋火葬許可証の交付|春日部市公式ホームページ
③墓地の管理者との協議
改葬を進める前に、現在の墓地の管理者(寺院や霊園など)と改葬について話し合いをします。
改葬には墓地の使用契約の終了が伴うため、管理者にはあらかじめ事情を説明し、手続きについて協力をお願いしましょう。
④改葬許可証の取得
改葬許可申請書を提出し、自治体の審査が終わると「改葬許可証」が発行されます。
この許可証があれば、遺骨を正式に移動させることができます。
改葬許可証は無期限で有効ですが、できるだけ速やかに新しい墓所へ納骨するのが一般的です。
【関連リンク】
・改葬許可申請書 – 東松山市公式ホームページ
・改葬許可申請書 狭山市公式ウェブサイト
⑤墓石の撤去と遺骨の移動
墓地の管理者と協議が済んだら、専門業者に依頼して墓石を撤去し、遺骨を丁寧に取り出します。
取り出した遺骨を新しい納骨先へ移動し、慎重に新しい場所へ納骨します。
必要な書類一覧
- 改葬許可申請書:現在の墓所がある自治体で入手・提出
- 埋葬証明書:現在のお墓を管理している寺院や霊園で発行
- 受入証明書:新しい納骨先の寺院や霊園から発行
- 身分証明書の写し:申請者の本人確認書類が必要です
改葬の手続きは、準備する書類が多く時間がかかる場合もあります。事前に必要な手続きをしっかり確認し、早めに準備を進めることで、スムーズに改葬が行えます。
【関連リンク】
・墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年5月31日法律第48号)
改葬にかかる費用と相場
改葬を行うには、さまざまな手続きや移転先の費用がかかります。
改葬費用はお墓の種類や立地、納骨先の形式によって大きく異なりますが、一般的な相場は100万~250万円程度です。
以下に、改葬にかかる主な費用項目とその目安について解説します。
墓じまい費用
現在のお墓を撤去する際には、「墓じまい」の費用がかかります。
墓石の撤去費用は、お墓の大きさや場所によって異なり、8万~20万円程度が相場です。撤去作業には専門の業者が関わるため、費用は立地や作業の複雑さによって変動します。
改葬手続き費用
改葬を行う際には、自治体で「改葬許可申請書」を提出するなどの手続きが必要です。
この手続きにかかる費用は比較的少額で、数百円~1,500円程度です。
また、受入証明書や埋葬証明書の発行に、各数千円程度の費用がかかる場合もあります。
閉眼供養費用
改葬では、お墓から遺骨を取り出す前に「閉眼供養」という儀式を行い、魂を抜く作法が必要です。
閉眼供養のお布施は3万~5万円程度が一般的です。
お布施の額は、地域や寺院によって異なる場合があるため、事前に確認しておくと安心です。
新しい納骨先の費用
新しい納骨先にかかる費用は、納骨先の種類や施設によって大きく異なります。
一般的な霊園やお墓への納骨であれば、10万~300万円以上が目安です。
一方、合祀墓や納骨堂などの永代供養を選ぶ場合は、1柱ごとに3万~5万円程度の費用がかかります。
永代供養は管理が不要なため費用を抑えられますが、遺骨を個別に管理しないため、家族で検討が必要です。
開眼供養費用
新しい墓所で納骨する際には、故人の魂を新しいお墓に宿らせる「開眼供養」を行います。
開眼供養のお布施は3万~5万円が一般的ですが、寺院や地域によって異なることがあります。
改葬費用のまとめ
改葬には、現在のお墓を撤去する費用や、新しい納骨先にかかる費用、閉眼供養や開眼供養などの儀式費用が含まれ、総額で100万~250万円程度の費用がかかることが多いです。
費用を抑えたい場合は、合祀墓や納骨堂といった永代供養墓を選ぶことで管理費を軽減できます。
改葬は家族や親族と話し合い、費用や供養方法をしっかり検討して決めることが重要です。
改葬する際の注意点とトラブル対処法
改葬は、故人の遺骨を新しい場所に移すための重要な手続きですが、その過程でトラブルが生じることもあります。
ここでは、改葬に際して特に注意したい点と、トラブルが発生した際の対処法について解説します。
親族間の意見の不一致
改葬は家族全体に関わるため、親族間で意見が分かれることが多くあります。
特に、お墓の管理や費用負担、新しい納骨先の選定などでトラブルになりやすいです。
対処法:
改葬については、親族全員で事前に十分に話し合い、全員の合意を得ることが大切です。
事後報告では反発を招きやすいので、事前に事情や改葬の必要性を説明し、理解を得るように努めましょう。
寺院とのトラブル
改葬の際、現在のお墓を管理している寺院とのやりとりが必要です。
檀家契約を解除する際に「離檀料」という費用が発生することがあり、金額は寺院や地域によって異なります。
離檀料が高額になる場合もあるため、事前に金額を確認し、円満に手続きを進めるようにしましょう。
対処法:
住職にこれまでの供養への感謝をしっかりと伝え、丁寧に改葬を申し出る姿勢が大切です。
離檀料の金額について不明な点があれば、遠慮せずに確認し、無理な要求があった場合には第三者(自治体の相談窓口や宗教関連の団体)に相談するのも一つの方法です。
石材店選びでのトラブル
お墓の撤去や新しい墓石の建設は石材店に依頼しますが、石材店によっては価格や作業内容に差があるため、慎重に選ぶ必要があります。
中には適切な作業を行わなかったり、不法投棄をしたりする業者もあるため、信頼できる業者を選ぶことが重要です。
対処法:
石材店は、お寺や霊園からの紹介を受けるか、複数の業者から見積もりを取り、比較検討すると安心です。
また、実績があり評判の良い石材店を選び、施工後のアフターサービスが充実しているかも確認すると良いでしょう。
墓石の移転に関する注意点
改葬では、遺骨だけを移す場合と、墓石も一緒に移転する場合があります。
ただし、墓石の移転を受け入れてくれる霊園や墓地は限られており、移動先によっては受け入れを拒否されることもあります。
対処法:
墓石ごとの移転を希望する場合は、新しい霊園や墓地に事前に確認し、墓石の受け入れが可能かどうかを交渉しておきましょう。
墓石の移動が難しい場合には、あらかじめ新しい墓石を建てる選択も検討しておくと良いでしょう。
永代使用料の返金に関する誤解
改葬の際、今までの墓地の永代使用料が返金されると思い込んでいるケースがありますが、永代使用料は返金の対象外です。
この費用は墓地の利用権として支払われたものであり、改葬や撤去を行っても戻ってくることはありません。
対処法:
永代使用料が返金されることは少ないため、その点を理解した上で改葬を進めましょう。
管理者から返金されない旨を聞いた場合でも、トラブルに発展させず、今後の手続きに専念することが大切です。
改葬には複数の関係者が関わるため、丁寧に準備を進め、適切に対応することでトラブルを防ぎ、スムーズに手続きを行うことができます。
さらに!資料請求された方にもれなく
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葬祭部 さがみ典礼 執行役員
大学卒業後、アルファクラブ武蔵野(株)葬祭部さがみ典礼に就職してから約20年を葬儀場の現場でお客様の悲しみに寄り添ってきました。
現在は、さがみ典礼の責任者として、現場スタッフとともに残されたご家族のみなさまがより安心して葬儀を進めていただけるお手伝いできることを心掛けています。
2004年3月 東邦大学理学部卒業
2004年4月 アルファクラブ武蔵野(株)葬祭部 入社
2020年1月 アルファクラブ武蔵野(株)葬祭部 川口支社 支社長
2021年5月 アルファクラブ武蔵野(株)葬祭部 副本部長
2022年5月 アルファクラブ武蔵野(株)葬祭部 本部長
2023年9月 (有)中央福祉葬祭 取締役(アルファクラブ武蔵野(株)葬祭部 本部長兼務)
2024年5月 アルファクラブ武蔵野(株)葬祭部 執行役員