現代社会では、多様な価値観が認められるようになり、死生観においても個々の選択肢が重視されています。
そんな中、注目されているのが「自然葬」です。
この記事では、自然葬とは何か、なぜ注目されているのか、その種類や費用、メリット・デメリットについて初心者にもわかりやすく解説していきます。
自然との調和を大切にしたいという考え方から生まれた自然葬について、一緒に学んでいきましょう。
自然葬とは?
自然葬とは、伝統的な墓地や墓石を用いず、自然環境に遺骨を還す埋葬方法です。
この方法は、自然に還るという考え方に基づき、環境負荷を最小限に抑えることを目指しています。
自然葬には、樹木葬、海洋葬(海洋散骨)、空中葬、バルーン葬、宇宙葬など、さまざまな形態があります。
自然葬が注目される背景
自然葬が注目される背景は、社会的な変化に起因しています。
少子高齢化と核家族化が進む中、伝統的な墓地や家族墓の継承者が減少し、新しい墓地の確保が難しくなり、お墓の管理や継承に対する負担感の高まりが、個々の価値観に合わせた埋葬方法を求める動きにつながっています。
また、都市部の墓地不足や、墓石の高価格が自然葬の選択肢を広げています。
自然葬は、墓石を必要とせず、遺骨を自然に還す方法であるため、経済的負担が少なく、地理的な制約も受けにくいのが特徴です。
さらに、自然への回帰を願う現代人の意識の変化も自然葬が注目される要因です。
環境保護への関心の高まりとともに、死後も自然と一体化したいという願望が強まっています。
散骨や樹木葬など、自然に還る様々な方法が提供されており、個人の死生観や宗教観に合わせて選べる自由度の高さが受け入れられています。
このように、家族や地域共同体の解体、自分の死後のことを自ら決定する意識の高まりなど、現代社会の特徴が自然葬の背景にはあります。
伝統的な墓地や墓石に依存しない「脱継承」「脱墓石化」の考え方が、多様化する死生観に合致していると言えるでしょう。
自然葬の種類
自然葬は、従来の葬送方法とは異なり、自然との調和を重視した埋葬の形態です。
代表的な自然葬の種類には、樹木葬、海洋葬(海洋散骨)、空中葬があります。
それぞれの特徴を紹介していきます。
樹木葬(じゅもくそう)
樹木葬では、墓石の代わりに樹木や草花を墓標として、遺骨を埋葬します。
この方法は、都市部からアクセスしやすい「都市型・公園型」と、自然豊かな「里山型」に大別されます。
都市型では、シンボルツリーの下に複数家族の遺骨を埋葬することが多いのに対し、里山型ではより自然に近い環境での埋葬が可能です。
ただし、季節による景観の変化に注意が必要です。
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海洋葬(海洋散骨)
海洋葬は、遺骨を海に撒く散骨の方法です。
散骨は、生命の起源を感じさせる海への還元として選ばれます。
クルーザーや船を利用し、沖合でセレモニーを行います。
ただし、海洋散骨は厚生労働省のガイドラインに従い、適切な場所で行う必要があります。
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空中葬
空中葬は、航空機を使用して遺骨を散布する方法です。
ヘリコプターや小型飛行機を使い、特定の地点の上空で散骨を行います。
これに似た形式として、バルーン葬や宇宙葬があります。
バルーン葬では、遺骨が入った風船を飛ばし、高度が上昇し気圧が弱まると破裂して散骨されます。
宇宙葬では、遺骨をロケットで宇宙に送り出す方法です。
これらの方法は、散骨に特別な意義を見出す方に選ばれています。
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自然葬は、自然との共生を重視し、伝統的な墓地や墓石に依存しない新しい形の葬送方法です。
自分や故人の価値観に合った方法を選ぶことができるため、近年ますます注目されています。
自然葬のメリット・デメリット
従来の葬儀方法に代わる選択肢として人気を集めている自然葬のメリットとデメリットについても紹介していきます。
自然葬のメリット
個人の死生観を反映できる:
自然葬は、個人の意向や価値観を葬儀に反映させることができます。
自然への回帰や生命の循環といった思いを形にすることが可能です。
費用が比較的安価:
伝統的なお墓の建立や維持に比べ、自然葬は費用が抑えられます。
特にお墓を建てる費用や維持費が必要ないため、経済的な負担が少なくなります。
継承者が不要:
少子化や核家族化の影響で、お墓の継承者が不足している現代において、自然葬は継承者を必要としません。
これにより、残された家族への負担が軽減されます。
自然葬のデメリット
供養の場所が明確でない:
特に海洋葬や空中葬の場合、遺族が故人を供養するための具体的な場所が存在しないため、お墓参りや供養が難しいと感じることがあります。
宗教的・文化的抵抗:
一部の宗教や文化において、自然葬は受け入れられにくい場合があります。
また、家族や親族の間で意見の相違が生じることもあります。
遺骨の回収が不可能:
一度散骨や樹木葬を行うと、遺骨を回収することはほぼ不可能です。
このため、後悔するリスクがあり、事前に家族と十分に話し合う必要があります。
自然葬を選択する際は、これらのメリットとデメリットを十分に理解し、故人の意向と遺族の感情を慎重に考慮することが重要です。
自然葬の一般的な流れ
自然葬は、お墓の代わりに自然に還るという発想に基づいた葬送方法です。
以下に自然葬の一般的な流れを紹介します。
形式の選定
自然葬の初めに、どの形式を選ぶかを決めます。
樹木葬、海洋散骨、空中葬など、多くの種類があります。
この選択は、故人の意向や遺族の希望に基づき検討しましょう。
業者の選択
選んだ形式に適した業者を選びます。
葬儀から粉骨、散骨まで対応してくれる業者が望ましいです。
契約前にはサービス内容や費用を確認しましょう。
葬儀と火葬
故人の葬儀を行い、その後火葬します。
火葬後、遺骨は遺族や業者によって引き取られます。
樹木葬の場合は、この時点で「埋葬許可証」を受け取る必要があります。
粉骨
散骨する場合、遺骨をパウダー状にする必要があります。
この作業は一般人でも可能ですが、手間と時間を考慮して業者に依頼するのが一般的です。
埋葬・散骨
樹木葬では、「埋葬許可証」と遺骨を持参して埋葬場所へ向かいます。
散骨の場合は、指定された場所で遺骨を散布します。
散骨後は通常、「散骨証明書」が発行され、供養の際の参考になります。
自然葬の流れは、伝統的な葬儀とは異なりますが、故人と自然との一体感を感じることができるという点で特別な意味を持ちます。
行う際には法的な手続きや遺族間での意見の調整が必要です。
自然葬の費用相場
自然葬はその種類に応じて費用が異なります。
自然葬の種類ごとの大まかな費用相場を紹介します。
樹木葬の概算費用
合祀型: 一本の樹木に複数家族の遺骨を埋葬する場合、約10~20万円。
区画型: 各家族に区画が分け与えられる場合、約20~100万円。
個別・家族型: 一本の樹木に一家族の遺骨を埋葬する場合、約50~100万円。
【関連記事】(樹木葬に関する詳細は下記、記事をご参照ください。)
海洋葬(海洋散骨)の概算費用
個別散骨: 約20~40万円。
合同散骨: 約10~20万円。
委託散骨: 約5~10万円。
【関連記事】(海洋散骨に関する詳細は下記、記事をご参照ください。)
空中葬の概算費用
一般的な空中葬: 約30~60万円。
バルーン葬: 約20~30万円。
宇宙葬: 約100~250万円。
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これらの費用に加えて、散骨の際の献花やお供え物、交通費などの追加費用が発生する可能性があります。
また、遺骨の粉骨料や宿泊費などの費用が必要な場合もあります。
自然葬を行う際は、これらの費用も含めて総合的に検討し、予算内で最適な方法を選ぶことが重要です。
まとめ
現代社会では、無宗教の考えを持つ人が増え、伝統的な菩提寺との関わりが薄れる傾向にあります。
この変化は、葬儀や墓地に対する考え方にも影響を及ぼし、自然葬への関心が高まっています。
「自然に還る」信仰だけでなく、経済的な観点からも注目されるようになりました。
お墓を建てるための平均費用が約160万円程度となっている中で、お墓を持たない自然葬は、コスト削減の観点からも魅力的な選択肢となっています。
さらに、「納骨しない供養方法」として手元供養などの新しい形態が注目されるようになり、自然葬のニーズが高まっている現状があります。
自然葬は、樹木葬、海洋葬、空中葬など多様な種類があり、それぞれに費用や特徴、デメリットが存在します。
しかし、総じて環境への配慮と、個人の死生観を形にすることが可能な点が、自然葬の大きな魅力となっています。
自然葬は、これからも多くの人々にとって考慮すべき選択肢の一つとして存在し続けるでしょう。
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アルファクラブ武蔵野株式会社
葬祭部 さがみ典礼 執行役員
大学卒業後、アルファクラブ武蔵野(株)葬祭部さがみ典礼に就職してから約20年を葬儀場の現場でお客様の悲しみに寄り添ってきました。
現在は、さがみ典礼の責任者として、現場スタッフとともに残されたご家族のみなさまがより安心して葬儀を進めていただけるお手伝いできることを心掛けています。
2004年3月 東邦大学理学部卒業
2004年4月 アルファクラブ武蔵野(株)葬祭部 入社
2020年1月 アルファクラブ武蔵野(株)葬祭部 川口支社 支社長
2021年5月 アルファクラブ武蔵野(株)葬祭部 副本部長
2022年5月 アルファクラブ武蔵野(株)葬祭部 本部長
2023年9月 (有)中央福祉葬祭 取締役(アルファクラブ武蔵野(株)葬祭部 本部長兼務)
2024年5月 アルファクラブ武蔵野(株)葬祭部 執行役員