海に還る選択:海洋散骨の基礎知識-流れ・費用・注意点-

海洋散骨とは、故人の遺骨や遺灰を海に散布することで、永遠の安らぎを与える供養方法です。
この記事では、海洋散骨の基本的な概念から法的な側面、特徴、そしてその流れについて詳しく解説します。

散骨とは?

散骨とは?

散骨は、故人の遺骨を自然に還す供養方法です。
遺骨を粉末状にし、海や山、川などの自然環境に散布することを指します。
かつての日本では土葬や火葬後の土中への埋蔵が一般的でしたが、最近では散骨が新たな供養の形として注目されはじめています。

散骨のこれまでの流れ

日本では、高齢化や宗教観の多様化に伴い、散骨が増加しています。
過去には散骨に関する明確な法律がなく、業者は既存法の隙間を利用していましたが、現在では国が散骨に関するガイドラインを設けています。


※令和2年度、厚生労働省のホームページに、散骨に関するガイドライン(事業者向け)が掲載され、はじめて国が公に指針を示しました。

法的な側面

厚生労働省は散骨を次のように定義しています:

  • 法律に基づいて遺体を火葬していること
  • 焼骨を粉状にしていること
  • 墓地として認められた場所以外の陸地や水面に散布、投下すること

これにより、散骨が法的に認められた供養方法であることが確立されました。
次の章では、散骨に関する法的な認可と規制について詳しく解説します。

海洋散骨ガイドライン(厚生労働省)のポイントとマナー

海洋散骨ガイドライン(厚生労働省)のポイントとマナー

海洋散骨における厚生労働省のガイドラインは、法律ではなく行動指針ですが、散骨の一般化に向けて重要なステップです。
このガイドラインは事業者向けですが、一般利用者にとっても散骨の理解に役立ちます。

法令の遵守

散骨を行う際は、「墓地、埋葬等に関する法律」や「刑法」「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」など様々な法律を遵守する必要があります。
各地方公共団体が定める条例やガイドラインにも注意が必要です。

※「墓地、埋葬等に関する法律」「海上運送法」「刑法」「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」「民法」、その他各地方公共団体が制定した条例やガイドラインなど

散骨の場所

散骨の場所は、陸地では「特定区域」、海洋では「海岸から一定距離離れた海域」とされています。
散骨は周辺住民や漁業、観光業への影響を考慮し、慎重に場所を選ぶ必要があります。
散骨に関する条例を設けている場所もあるので、必ず確認をしましょう。

条例やガイドラインの例
・熱海市のガイドラインでは「熱海市内の土地(初島含む)から10キロメートル以上離れた海域で行うこと」と示されています。
・北海道の長沼町では、散骨をめぐって地元住民とのトラブルが発生したため散骨を完全に禁止しており、罰則を設けています。
・一般社団法人日本海洋散骨協会のガイドラインでは「人が立ち入ることができる陸地から1海里(1.852キロメートル以上離れた海洋上のみ」とされています。

焼骨の形状

火葬された焼骨は粉状に砕く必要があります。
これは、遺体遺棄罪を回避するためであり、ガイドラインにより粉骨が散骨目的に問題ないと認められています。

関係者への配慮

散骨は住民や土地の所有者、漁業や観光業関係者の利益や宗教感情を尊重する必要があります。
散骨は新しい弔いの方法であり、周囲の理解を得るためにも配慮が求められます。

自然環境への配慮

自然環境への配慮は重要で、焼骨以外の自然に還らない物は散骨に使用してはいけません。

注意しなければならないのは、副葬品(遺品)です。
一般的な海洋散骨の際の副葬品は、お酒やお花です。
お花に関しても、花びらだけを撒くなどの工夫もされています。

利用者との契約

散骨事業者の質はさまざまであるため、契約内容や費用の明細書の提示、解約の適用などの約款は事前に確認が必要です。

 利用者が損害を被ることがないよう、次に挙げる事柄を促しています。
 ・約款の整備
 ・利用者の契約内容の選択
 ・契約の締結(契約内容の適切な説明と理解、契約書の作成、費用の明細書の提示)
 ・契約の解約に応じる事

安全の確保

特に海洋散骨の場合は、海上運送法を遵守し、安全を確保することが義務付けられています。

散骨の公表

散骨事業者は散骨の実施状況を公表し、地方公共団体の要求に応じて提出することが推奨されています。

次に、散骨の際に注意すべき点について解説します。

海洋散骨の注意点

海洋散骨の注意点

厚生労働省ガイドラインから、全体像が見えてきたかと思います。
では、実際散骨を行う際にの留意する点について解説していきます。

ご遺族間の話し合い
散骨を行う際には、ご遺族間での十分な話し合いが必要です。
海洋散骨は増えていますが、まだまだ一般的ではありません。
生前の希望があった場合でも、遺族間での意見の相違が生じる可能性があるため、事前の合意形成(書面に残すなど)が重要です。
また海洋散骨の場合、お墓参りの際に手を合わせるシンボルがないため、一部を散骨し一部をお墓に埋葬するという方法を捉える方もいます。
ご家族間で感情のしこりや、後悔が残らないように、ご遺族で事前に話し合いをしましょう。

必ず粉骨をしなければならない
散骨では遺骨を粉末状にすることが必須です。
この処理は、遺体遺棄罪を避け、遺骨が外部に認識されないようにするためです。
一般的には、遺骨を1mm〜2mm程度の粉末状に粉砕します。

専門業者に依頼することを推奨
自ら散骨を行うことも可能ですが、法的問題や心理的負担を考慮すると、専門業者に依頼するのが賢明です。
専門業者はトラブル防止や心情的なサポートを提供し、適切な散骨を実施します。

散骨の場所の選定
散骨の場所選びは慎重に行う必要があります。
陸地では特定区域、海洋では一定距離離れた海域が指定されます。
周辺住民や業界関係者の利益や宗教感情を考慮し、適切な場所を選ぶことが重要です。

散骨のマナー
散骨では、自然環境への配慮が必要です。
副葬品として自然に還らない物の散布は避け、散骨の際の服装も安全性を考慮したものを選びます。

副葬品の選定
自然環境への影響を考慮し、副葬品は自然に還るものを選ぶことが望ましいです。
例えば、お酒や花びらなどが適しています。

これらの注意点を踏まえ、次に海洋散骨の流れについて解説していきます。

海洋散骨の流れ

海洋散骨の流れ

海洋散骨は、故人の最終的な弔いの場所として選ばれることが増えていますが、その流れや手続きは従来の葬儀方法とは異なります。
以下にその基本的なプロセスを説明します。

海洋散骨の準備

事前の準備と相談
家族や親族との話し合い:散骨を希望する方は、その理解を家族や親族に得るために十分な話し合いを設ける必要があります。
生前契約:身寄りのない方などは、事業者によって生前契約が可能です。

散骨業者との相談と契約
業者選定:複数の海洋散骨業者から情報を収集し、散骨場所や料金、サービス内容を比較検討します。
申込みと書類準備:必要な書類には散骨申込同意書、粉末化依頼同意書、遺骨引き渡し証明書などが含まれます。
書類に不備がなければ申込みを完了し、支払いを行います。

散骨当日の流れ

集合と出航:
定められた乗船場所に集合し、安全説明を受けた後に出航します。

セレモニーの実施:
散骨ポイントに到着後、散骨セレモニーを行います。これには散骨、献酒、献花、黙祷などが含まれます。

帰港と解散:
散骨後は、出発地点へ帰港し、解散します。一部の場合、別の場所で会食を行うこともあります。

注意点
粉骨:散骨の前には遺骨を1mm~2mm程度の粉末状に粉骨する必要があります。
業者によっては遺族の立ち会いが可能です。
天候や海の状況:天候や海の状態によっては散骨が延期や中止となる場合があります。

このプロセスに基づいて、海洋散骨を行うことで、故人は穏やかな海へと還り、家族は新たな形で故人を偲ぶことができます。
次に、海洋散骨にかかる費用について解説します。

海洋散骨にかかる費用

海洋散骨にかかる費用

海洋散骨は、新しい葬儀の形として注目を集めていますが、その費用相場は散骨の方法やプランによって異なります。
ここでは、主なプランとそれぞれの費用について解説します。

代行散骨

概要:
業者に遺骨を預け、散骨を委託します。家族は参加せず、業者が散骨を実施します。
費用相場:
約5万円程度。比較的低コストで、散骨を行うことができます。

合同散骨

概要:
複数の家族が一緒に船に乗り合わせて散骨を行います。各家族が順番にセレモニーを実施します。
費用相場:
10万円から20万円程度。船のチャーター代を分割するため、個別プランに比べて費用が抑えられます。

個別チャータープラン

概要:
一組の家族が船をチャーターして、散骨を行います。プライベートな空間でゆったりとセレモニーを実施できます。
費用相場:
20万円から30万円程度。最も高額ですが、自由度が高く、落ち着いた環境で散骨が可能です。

その他の費用

粉骨の料金
散骨のためには、必ず遺骨を粉末状にする必要があります。
この粉骨の料金がプランに含まれているかどうかは、事業者ごとに異なるため、事前に確認が必要です。

追加料金:
粉骨がプランに含まれていない場合、別途料金が発生することがあります。
この料金は1万円から3万円程度が相場で

注意点
見積もり:
複数の事業者から見積もりを取り、サービス内容と費用を比較することが重要です。
追加料金:
散骨の際に特別なセレモニーやオプションサービスを希望する場合は、追加料金が発生することがあります。
そのため、プランの内容を事前に詳細に確認しましょう。


海洋散骨は、予算に応じて様々な選択肢があるため、事前にしっかりと情報収集を行い、故人とご家族にとって最適なプランを選ぶことが大切です。

繰り返しになりますが、海洋散骨は増えていますが、まだまだ一般的ではありません。
後悔しないように、ご遺族で事前に話し合いをしていきましょう。

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