身内が亡くなった場合、葬儀を行う必要がありますが、その前に行われるのが「納棺」という儀式です。納棺とはご遺体を棺に納めることですが、納めるまでにも様々なことを行います。
納棺に立ち会ったことのない方にとっては、具体的にどのようなことをするのかわからないかもしれません。
本記事では、納棺とは何か、具体的な流れや内容、基本的なマナーなどを含めて解説します。納棺について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
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納棺とは、故人のご遺体を清め、旅立ちに向けた支度を行うための儀式です。死後の世界に持っていく品物とともに、ご遺体を棺に納めます。納棺は、故人が亡くなってから通夜までの間に行われます。通夜のない葬儀の場合は、告別式や火葬式の前に納棺を行います。
納棺は、故人が安らかに旅立つための大切な儀式であるとともに、遺族にとっても大切な時間です。一般的な葬儀を行う場合は、式の準備や参列者の対応に追われるため、納棺が故人に触れながらゆっくり過ごす最後の時間となります。
葬儀の準備もあるため、納棺の予定は時間に余裕を持って立てる必要があります。そのために、納棺がどこで行われるのか、どのくらいの時間がかかるのかを事前に把握しておかなければなりません。
さらに、納棺に立ち会う人や服装も、あらかじめ知っておくと直前になって慌てずに済むでしょう。納棺を行う場所と所要時間、立ち会う人と服装も詳しく説明します。
納棺はご遺体が安置されている場所で行われます。一般的には、葬儀社が所有する安置所や斎場(葬儀場)、自宅で行われることが多いです。
安置専用の施設で納棺できない場合は、斎場にご遺体を搬送してから行われます。自宅の場合は、畳の部屋や仏壇のある部屋で行われるのが一般的です。
納棺の所要時間は約30分〜1時間程度が目安ですが、じっくり行った場合は2時間程度かかる場合もあります。
通夜の準備が始まるまでに終わるよう逆算して、納棺の開始時間を決めると良いでしょう。通夜のない葬儀の場合は、告別式や火葬式の時間から逆算しましょう。
葬儀場で行う場合は、通夜(または告別式や火葬式)の2~4時間前が納棺開始時間の目安です。別の場所で行う場合は、移動時間も考慮して決める必要があります。
納棺の儀式には遺族や親族が立ち会い、葬儀社のスタッフの誘導で行うのが基本的な形です。配偶者・子・孫など、故人と関係の近い遺族・親族が参加します。納棺は身内のみで行う儀式のため、友人や仕事の関係者などは参加しないのが一般的です。
身内のみで納棺を行うことには理由があります。前述の通り、納棺には「遺族と故人が向き合って別れの時間を過ごす」という意味が含まれています。近しい少人数の身内のみで納棺を行うことで、故人と十分に向き合える時間となります。
また、納棺では故人の肌が露出する場面もあります。大人数ではなく限られた身内のみが立ち会うことには、故人への配慮も含まれています。なお、納棺に立ち会う遺族がいない場合は、代理人に依頼するケースもあるようです。
納棺に立ち会う際の服装は、喪服やブラックフォーマルを選ぶと良いでしょう。ただし、自宅で納棺を行う場合は、落ち着いた色の平服でも問題ありません。一般的には通夜の直前に行われることが多いため、準備も考慮して喪服で参加が望ましいです。
納棺は複数の儀式で構成されており、各儀式に意味が込められています。手順は前後するケースもありますが、一般的な納棺の流れは以下の通りです。
①末期(まつご)の水をとる
②湯灌(ゆかん)を行う
③死化粧(しにげしょう)を施す
④死装束(しにしょうぞく)を着せる
⑤故人を棺に納める
⑥副葬品を棺に納める
⑦ふたをする
ただし、上記の全ての儀式を必ず行うわけではありません。亡くなった状況や遺族の希望により、必要な儀式を選び納棺を行います。それぞれの儀式の内容を詳しく説明します。
「末期の水」とは、故人の喉を潤すことで安らかな旅立ちの願いを込める儀式です。水を含ませた脱脂綿で故人の唇を湿らせます。元々は、亡くなった直後や安置時に行われていました。
お椀に汲んだ水に脱脂綿をつけ、故人の口に当ててなぞるように動かしていきます。割り箸の先に脱脂綿を巻き、白い糸で縛って固定したものを用いるのが一般的です。地域によっては、筆や鳥の羽、菊の葉を使用する場合もあります。
末期の水は、故人との関係性が近い方から順に、交代しながら行います。配偶者、子、親、兄弟姉妹、子の配偶者、孫、叔父叔母の順で行われるのが一般的です。全員が終えてから、故人の顔を優しく拭き、次の儀式へと移ります。
湯灌とは、葬儀の前に故人の体をきれいにするために行う儀式のことです。生前の悩みや煩悩を洗い流す意味や、産湯に見立て来世での生まれ変わりを願う意味も込められています。
水にお湯を足す「逆さ水」の方法で湯船にお湯をはり、洗髪や洗体を行います。昔は各家庭で行われていましたが、現在は葬儀場の湯灌施設を用いて湯灌師が行うのが一般的です。
なお、湯灌は故人の肌が露出しプライバシーに関わる儀式のため、立ち会いには配慮が求められます。
現在は、故人を湯船に入れるのではなく、ガーゼなどで体を拭く「清拭(せいしき)」で代用するケースも増えています。病院や介護施設で亡くなった場合は、エンゼルケアや最後の清拭を湯灌とするケースもあるようです。
一般的な葬儀プランでは、湯船を用いる湯灌はオプションとなることが多いため、ご希望の場合は事前に確認しておきましょう。
死化粧は、故人の顔に化粧を施して身なりを整える儀式です。安らかに眠っている姿に近付けることで、遺族が故人の死を受け入れ、心穏やかに見送れるようにする意味も含まれています。
死化粧では、生前の姿に近付けるために、口に「含み綿」を入れることもあります。また、化粧をするだけでなく、髪を整える、ひげを剃る、爪を切るなどの行為も死化粧の内容となります。
葬儀会社のスタッフが行うことが多いですが、希望により遺族が関わることもできます。病院で亡くなった場合は、看護師が行うケースもあるようです。
死化粧は死装束を着せてから行う場合もあるため、順番は前後するかもしれません。なお、死化粧の前に遺族の希望によりエンバーミングが行われるケースもあります。
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死装束とは、旅立ちにふさわしい格好にするために着せるものです。基本的には、巡礼者や修行僧が着る「経帷子(きょうかたびら)」を着せます。白い死装束が一般的ですが、他の色や模様が付いたものもあります。
死装束は、襟が左前になるように着せましょう。左前にすると、この世とあの世が真逆であることや、生きている人と亡くなった人を区別する意味が込められています。
帯はかた結びにした後、蝶結びを縦に向ける「縦結び」にして、ほどけにくくします。何度も結び直さなくてもいいようにすることで、悲しいでき事を繰り返さないように、故人が旅中に困らないようになどの願いが込められます。
経帷子の死装束を着せる際には、白足袋、脚絆、手甲、草鞋などの小物も身に着けて整えます。
死装束は仏教の考えに基づいた衣装のため、宗教・宗派に関係なく見送りたい場合は他の服でも問題ありません。故人の生前の願いや故人らしさを重視して、遺族が故人の私服や着物、ドレスなどを死装束に選ぶケースはよくあります。
また、自分らしい姿で旅立ちたいと考える方が、終活で自ら死装束を選ぶ場合もあるようです。生前よく着ていたお気に入りの服が選ばれることもあり、死装束は多様化しています。
死化粧が終わり、死装束を着せて故人の姿が整ったら納棺となります。遺族が複数人で故人の体を支えながら棺に納めますが、現在では葬儀社のスタッフが行うことも多いです。
棺に納められたら、両手を胸のうえで組ませて髪や装束を整えます。最後に葬儀社のスタッフにより、遺体保護用のドライアイスなどの保冷剤がセットされ、棺用の布団がかけられます。
故人を棺に納めたら、副葬品として故人を弔うための物品を納めます。納棺の際に行われますが、出棺前の「花入れの儀」でも副葬品を入れることは可能です。
死装束(経帷子)の付属品である笠や杖などの他、故人が愛用していたものを入れます。また、遺族が故人に持って行ってほしいものを選んで入れることが多いです。最後のプレゼントという意味もあるため、贈り物を入れるのも良いでしょう。
ただし、副葬品を入れたら棺ごと火葬するため、燃やせないものや燃えると危険なものは入れられない点に注意が必要です。副葬品として納められるものと納められないものを、具体的に挙げて説明します。
副葬品に納められるものとしては、以下のようなものがよく選ばれています。
花に関しては、出棺前の花入れの儀でも一般的に入れられます。葬儀で飾られていた花を入れる他、故人が好きだった花を別で用意して入れるケースもあります。故人に宛てて書いた手紙や、故人が生前大切にしていた手紙を入れるのも良いでしょう。
思い出の写真は、故人の好きな景色が写っているものや、故人が趣味で撮影していたものを選ぶことが望ましいです。存命の方が写っているものを棺に納めるのは、縁起が悪いとされるため避けましょう。
洋服や小物は、故人が愛用していたものを選ぶと良いでしょう。ただし、燃えにくい素材や厚手のものは火葬の妨げとなるため避けてください。
食べ物や飲み物も、故人が好きだったものを入れましょう。燃えやすいものに限られるため、缶や瓶などに入った状態では入れられません。紙製以外の容器の場合は、中身を出して入れる必要があります。飲み物は紙パックのものに限られます。
以下のようなものは、副葬品として納めることができません。
金属製の指輪や眼鏡、腕時計などのアクセサリーは、溶けて遺骨を汚してしまう他、火葬炉の故障の原因になるため入れられません。アクセサリー類を納めたい場合は、火葬後に骨壺に入れる方法もあります。
カーボン製の釣り竿やラケット、ゴルフクラブなども、火葬炉の故障の原因になるため避けましょう。スプレー缶やライター、電池などは、燃やすと爆発する可能性があるため危険です。
分厚い書籍は燃えにくく、大量の灰が出てしまいます。遺骨拾いの際に悪影響があるため、どうしても納めたい場合は一部分だけ切って入れると良いでしょう。
また、食べ物や飲み物でも燃えにくいものには注意が必要です。水分の多い果物は燃えにくいため、一部分だけを切って入れるかドライフルーツを選ぶなど工夫しましょう。
なお、お金を副葬品にするのは法律違反行為となるため、硬貨や紙幣を入れることはできません。※
※出典:デジタル庁e-Govポータル「貨幣損傷等取締法」
故人とともに副葬品も納められたら、棺にふたをします。ふたを閉じたら合掌して納棺が終わります。
一般的にはふたをするだけですが、地域によっては出棺の直前に釘を打って閉じる場合もあるようです。また、仏式では棺かけ(「七条袈裟」と呼ばれる布)を用いますが、棺のデザイン性が高く、使用しない場合もあります。
納棺が終わったら、式場の場合は祭壇に棺を安置します。自宅で納棺した場合は、式場に搬送するまでそのまま安置しておきます。
これまで説明してきた納棺の流れは、仏教の考えに基づくもので、日本では広く受け継がれてきた形式です。しかし、地域や宗教によって納棺の流れや方法には違いがあります。代表的な例として、キリスト教と神道の納棺の概要を紹介します。
同じキリスト教でも、カトリックとプロテスタントでは違いがあります。カトリックの場合は神父が、プロテスタントでは牧師が立ち会い納棺を行います。
いずれの場合も、故人の体をきれいにした後、死化粧をします。故人が好んでいた衣類を着せたら、手を胸のうえで組ませて十字架やロザリオを持たせます。その後、神父や牧師による祈りや聖書朗読などが行われます。
カトリックの場合は、神父がご遺体に聖水をかけて清めます。ご遺体を棺に納めたら、周りを白い花で埋めてふたをします。さらに黒い布をかけ、十字架を置きます。一方、プロテスタントではご遺体に白い布をかけてから花で埋め、ふたをします。
神式の納棺は仏式と同様の作法で行いますが、死装束や棺を覆う布に仏式とは異なる特徴があります。
神式では「神衣(かんみそ、かむい)」と呼ばれる白い狩衣の死装束を着せます。また、ご遺体を新しい褥(しとね)と呼ばれる敷物ごと棺に納めます。棺にふたをしたら、白布で覆って安置します。
納棺にかかる費用は、内容や葬儀社によって異なります。主に湯灌に対して費用がかかり、前述の通り葬儀会社の葬儀プラン料金には含まれていないことが多いです。湯灌はオプション扱いとなることが一般的なため、必要な場合は葬儀会社に確認しましょう。
湯灌を含む納棺の費用は10万円前後が相場です。湯船やシャワーを用いない清拭の場合は、相場より安価になる傾向があります。
また、死装束の選び方でも料金に差が出ます。豪華な死装束を希望する場合は、費用も高額となります。死化粧もオプション扱いで別料金の場合があるため、確認が必要です。
正確な費用を把握するためにも、葬儀会社に納棺に含まれる内容と料金を確認しておきましょう。
納棺後は通夜と告別式の準備を行います。その間、棺は葬儀場に安置されます。通夜は関係者が参列し、故人との最後の夜を過ごしお別れするための儀式です。通夜を行わず告別式のみ、または火葬式のみ(直葬)の葬儀もあります。
通夜は納棺当日に行われることがほとんどのため、葬儀社スタッフとともに会場準備や進行、弔辞の確認などする必要があります。
告別式は正式に故人を送り出す儀式で、終了後は出棺し火葬場まで運ばれます。遺族も火葬場に移動し、故人を見送った後は1時間ほど待機し、骨上げを行います。
直葬(火葬式)を選択した場合は、通夜や告別式は行われないため、納棺後は直接火葬場でのお見送りを行います。
納棺後の葬儀に関しては多様な選択肢があるため、悩む方も多いのではないでしょうか。葬儀に関することは、さがみ典礼に気軽にご相談ください。
さがみ典礼は、埼玉県を中心に創業60年以上にわたり葬儀サービスを提供しています。一級葬祭ディレクターの在籍数が多く、一段上の経験と知識を持つ「キャップ」も在籍しているため、ご要望に対して細やかに対応します。
さがみ典礼の葬儀プランは、必要以上に豪華なもの、広すぎる式場などの無駄を省き、本当に必要なものだけを残しているのが特徴です。湯灌、死化粧(フューネラルメイク)などのオプションを用意しているため、必要に応じてお選びいただけます。
低価格でも心のこもったお見送りができる多様なプランを、人数や内容から選べる点が魅力です。シンプルでも華やかで高品質な葬儀をご希望の場合は、「一般葬」プランをおすすめします。ご家族以外にご友人や職場の人の参列も想定した告別式が行えるプランです。
さがみ典礼の一般葬では、ご搬送・ご安置の後、告別式と火葬を行います。通夜式がなく告別式が含まれるプランのため、シンプルでありながらきちんとしたお見送りができます。故人様に合わせたオリジナルの演出も可能です。
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納棺は、故人が旅立つ準備をするための儀式です。遺族にとっても故人と向き合い、死を受け入れるための大切な時間となります。葬儀会社のスタッフの誘導により、故人と近い家族・親族のみで行われます。
棺に納める前に湯灌や死化粧を行うことで、故人の身を清め、旅立ちにふさわしい姿に整えます。地域や宗教によって納棺の方法や手順は異なるため、事前に確認するのが望ましいです。
また、ご遺体とともに棺に入れる副葬品には、入れられるものと入れられないものがあるため、副葬品を選ぶ際には注意が必要です。故人への贈り物を入れる場合も、火葬しても差し支えないものを選ぶ必要があります。
心を込めて納棺を行い、故人とのひとときを大切に過ごしましょう。なお、葬儀のことで不安な点がある方は、さがみ典礼にお気軽にご相談ください。
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