遺体引き取りや拒否と相続放棄の手続き。法的関係・ 費用負担について

家族の死は突然やってきますが、その際に直面するのが遺体の引き取りです。
疎遠だったり、家族関係に問題がある場合、遺体の引き取りは複雑な感情を引き起こすことがあります。
この記事では、この困難なプロセスについて詳しく解説します。

遺体引き取りの基本から始め、拒否する場合の法的な権利、費用的な側面、そして相続との関連性について掘り下げていきます。
孤独死のケースでは、遺体の発見から警察の役割、引き取りまでのプロセスとそれに伴う費用も詳細に説明します。
遺体引き取りを拒否した場合でも、相続放棄の手続きが必要であることや、扶養義務者が負担するべき費用についても詳しく解説していきます。

この記事を通じて、遺体の引き取りや拒否に関連する法的、費用的側面を理解し、突然の訃報に直面した際の対応方法を学んでいただければ幸いです。

親族・家族は遺体の引き取り拒否が出来るのか?

親族・家族は遺体の引き取り拒否が出来るのか?

近年、社会の高齢化に伴い、孤独死が増加しています。
疎遠になっていた親族の訃報を突然受け、遺体の引き取りについて悩む方も少なくありません。
ここでは、遺体の引き取り拒否について理解を深めるためのポイントを解説します。

遺体の引き取り拒否は権利です。

法的に見て、遺体を引き取ることは必ずしも義務ではありません。
家族や親族は、遺体の引き取りを拒否する権利を有しています。
これは、「親交が少なかった」「長年音信不通だった」といった理由でも適用されます。
しかし、引き取りを拒否する際には、所定の手続きが必要になることがあります。

遺体の引き取りを拒否する権利があるとはいえ、自身の良心や感情、現状を考慮して慎重に決定することが重要です。
遺体の引き取りを拒否することが良心にかかる場合は、引き取りを検討することも一つの選択肢となります。

故人の意向の考慮

故人が遺言や遺書、口頭で特定の人を遺体の引き取り手として指名している場合があります。
このような場合でも、指名された人は引き取りを拒否することが可能ですが、家族や専門家と十分に相談してから決定することをお勧めします。

引き取りを拒否した場合遺体はどうなるのか?

遺体の引き取りを拒否した場合、その遺体は通常、地域の火葬場で火葬され、警察や市町村が管理する無縁墓に埋葬されます。
こうした場合、故人は「行旅死亡人(こうりょしぼうにん)」として扱われることが一般的です。

※行旅死亡人(こうりょしぼうにん):法律上で用いられる言葉で、身元が判明せず、また遺体の引き取り手が存在しない死者を指します。

遺体の引き取り拒否と遺産相続との関係

遺体の引き取りを拒否しても、遺産を相続する意向があれば、葬儀の費用負担は避けられません。
また、遺体引き取りの拒否が自動的に相続放棄を意味するわけではないことに注意が必要です。

親族や家族が遺体の引き取りを拒否することは可能ですが、これには法的、道徳的な側面が伴います。
状況に応じて、適切な対応を取ることが大切です。

遺体引き取りの連絡が来るタイミング

遺体引き取りの連絡が来るタイミング

遺体の引き取りに関する連絡は、故人の状況や発見の状態によって異なるタイミングで親族に届きます。
ここでは、遺体が発見された後に行われる一連の手続きと、親族への連絡の流れについて解説します。

遺体が発見された場合

警察の身元確認と初期連絡

遺体が発見されると、まず警察が身元を確認します。
身元が判明した場合、警察、火葬場、または自治体のいずれかから家族や親族に連絡が届きます。
これは、事件・事故・孤独死などの状況によって異なります。

火葬場からの連絡

すでに火葬が終わっている場合は、火葬場から遺族に連絡が来ます。
関東圏では、火葬から収骨までを終わらせた状態で火葬場が遺族に引き渡しますが、関西圏では収骨が終わった後、自治体に移されることが一般的です。

警察や自治体からの連絡

警察から遺体引き取りの連絡が来た場合、比較的問題なく引き取り拒否ができます。
しかし、警察から自治体に遺体が引き渡されると、自治体が無縁仏として火葬手続きを行い、その後遺骨の処理に関して遺族に連絡が入ることがあります。

遺体引き取り拒否の地域による違い

地域によっては、遺骨の引き取り拒否が容易または困難な場合があります。
特に関東圏では、遺骨の引き取り拒否が難しい傾向にあるので注意が必要です。
このように、遺体引き取りの連絡は状況に応じて様々な形で行われ、親族はその連絡に基づいて対応する必要があります。
遺体の引き取りを拒否する場合でも、適切な手続きを踏むことが大切です。
また、地域によって対応方法や流れが異なるため、遺体引き取りの連絡が来た際は、その地域の規定を確認することが重要です。

※関東は遺骨の置き場所が確保できない等の理由により、火葬場から遺体の引き取りを強く求められる場合もあります。関東圏では民間の火葬場が多いので、遺族が連絡を受けてから遺骨の引き取り拒否をするのは難しい場合があります。

遺体の引き取り拒否と相続の手続き

遺体の引き取り拒否と相続の手続き

相続において、故人の遺体引き取りの拒否は、相続放棄とは直接的な関係がありません。
遺体の引き取りを拒否したとしても、それによって自動的に相続が放棄されるわけではないのです。
以下では、遺体の引き取り拒否が相続手続きにどのような影響を及ぼすか、また、相続放棄を行う際の正しい手順について解説します。

遺体引き取り拒否と相続は別問題

遺体引き取りを拒否しても、故人からの遺産や負債の相続権が消失するわけではありません。
遺体の引き取りと相続財産の扱いは、法的には別の問題として取り扱われます。
これは、故人との関係がどのようなものであったとしても変わりません。

相続放棄の手続き

もし相続放棄を考えている場合、故人の遺体引き取り拒否だけでは不十分です。
相続放棄を行うには、故人の死を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。
この手続きを怠ると、故人の負債を含む全ての財産を相続することになりかねません。

必要な手続きと期限

相続放棄をする際には、以下のステップを踏む必要があります.

  1. 相続放棄申述書の作成
  2. 故人の戸籍謄本除籍謄本などの必要書類の収集
  3. これらの書類を添えて家庭裁判所に提出

相続放棄の申立ては、相続が開始したことを知った日から3ヶ月以内に行う必要があります。
期限内に手続きを行わないと、相続放棄の権利を失うことになります。
期限が迫っている場合は、専門家に相談することをお勧めします。

引き取り拒否と相続放棄の関連性

遺体引き取りの拒否と相続放棄は、相続においては異なるアクションを必要とします。
相続放棄を考えている場合、遺体の引き取り拒否だけでは不十分であり、家庭裁判所による正式な手続きを経る必要があることを理解しておくことが重要です。
遺体の引き取りを拒否することが可能であっても、相続放棄には明確な手続きと期限が定められています。

遺体引き取り拒否をする時の注意点とまとめ

遺体引き取り拒否をする時の注意点とまとめ

遺体の引き取り拒否は、深刻かつ複雑な感情を伴うことが多く、法的な影響も考慮する必要があります。
このような状況に直面した際は、以下のポイントに注意して行動しましょう。

周囲の人と相談しましょう

遺体の引き取りは感情的にも、法的にもデリケートな問題です。
特に、故人との関係が良好でなかった場合、衝動的に引き取りを拒否したくなるかもしれません。
冷静な判断を下すためにも、家族や信頼できる友人、または専門家と相談することをお勧めします。
客観的な意見を聞くことで、後悔のない決断ができる可能性が高まります。

相続放棄と火葬費用の負担は別

遺体引き取りの拒否と相続放棄は別の法的行為です。
相続放棄をしても、扶養義務者は故人の火葬費用を請求される可能性があります。
扶養義務者には故人の配偶者、子ども、兄弟姉妹などが含まれる場合があります。
相続放棄を行う場合でも、火葬費用の支払い義務が生じるかどうかを事前に確認し、適切な対応を取ることが必要です。

遺品の処分と相続放棄の関係

遺体の引き取り拒否や相続放棄を検討する際は、故人の遺品を勝手に処分しないよう注意が必要です。
故人の遺品を処分する行為は、相続放棄が認められなくなるリスクを高めるためです。
特に、故人の居住空間を清掃する必要がある場合は、相続放棄の意向がある場合でも、専門家に相談することをお勧めします。

故人の遺体引き取り先の指定していた場合

故人が生前、遺言などで遺体の引き取り先を指定している場合があります。
このような指定があった場合でも、引き取りを拒否する権利は存在しますが、故人の意向と自身の感情を総合的に考慮して決断することが望ましいでしょう。

遺体の引き取り拒否をする際には、上記の点に留意し、法的な影響や道徳的な側面を慎重に考慮することが重要です。
特に、相続放棄を検討している場合は、家庭裁判所への申立て期限など、具体的な手続きの要件に注意を払う必要があります。
適切な対応を取るためにも、専門家との相談を検討することをお勧めします。

遺体引き取りや拒否に関するよくあるご質問

遺体引き取りや拒否に関するよくあるご質問

Q.遺体の引き取りを拒否した場合、遺体処理の費用負担はどうなりますか?

A.

自治体が遺体を処理した際、費用を請求される順番は下記の通りです。

  • 死亡人の財産から充当する。
  • 相続人が負担する。
  • 死亡人の扶養義務者が負担する。          
  • 不足分の弁償金が回収できない場合は、自治体が負担する。

相続人が遺体の引き取りを拒否しても、相続放棄をしてなければ、自治体から葬儀費用を請求される可能性があります。
相続放棄をする場合は、自分が相続人であることを知ってから3か月以内に手続きをする必要があります。

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